かつて、ポー川河口のデルタ地帯北部の干潟には、一一八の島々と泥滓の洲が点在していた。六世紀、近隣の沿岸地域にいた漁師や農民たちが、アルプスを越えてきた東方の異民族に追われ、干潟の島々に住み着いた。これがヴェネツィアの起源である。九世紀になると聖マルコの聖骸を得てビザンティン帝国から独立し、リアルト島に新都の中心がおかれ、一五世紀には繁栄の絶頂を迎える。その商船隊はアドリア海対岸のダルマティア一帯を
「沈みゆく都市」と化した水の都... の続きを読む
温泉入浴は温熱作用により痛みを取り、浮力の作用により運動を助け、粘性抵抗により筋力増強訓練に利用できる。有痛性の運動器疾患は高齢者に多くみられることから、温熱作用が強く、体への刺激がほかの泉質に比べてマイルドな塩化物泉や単純温泉などが適している。また硫黄泉は、温熱による鎮痛効果や血管拡張による循環改善効果とともに、結合組織の代謝異常にも効果があるとされ、リウマチ疾患に適応がある(白倉二〇〇七年)。
変形性関節症、脊椎症、関節リウマチなど有痛性の運動... の続きを読む
九六〇年代後半から続いた文化人革命によって多くの寺院や仏像が破壊され、衰退しきっていた中国仏教が、ここにきて急速に復興を遂げていることを肌で感じさせる光景である。標高三〇九九メートルの山頂に向かうにつれて、峨眉山の風景は目まぐるしく変化していく。「一日のなかに四季がある」と言われるように、山麓と山頂とでは天気が全く異なることも珍しくない。標高二五〇〇メートルを超えるあたりから次第に空気が薄くなり、
「一日のなかに四季がある」神秘の風景... の続きを読む
「船は揺れるでしょう」とよく聞かれるが、もちろん海の状況で、どんな船でも揺れる時は揺れる。しかし、それより気になるのは、船の振動である。港に接岸させるときは、サイドスラスター(船の胴体に付いた小さなスクリュー)などで、横に動かそうとするので、早朝、港に着くとき、その振動で目が覚めることが多い。しかし「セレニテイ」は朝、接岸したことがまったくわからなかった。気が付くと、港にいるというくらい、揺れがな
サンディエゴから意外に多くの人が乗船... の続きを読む
健康のためにそれくらい歩けと言われるかもしれないが、ディナーの時間になり、短パンからタキシードに着替え、あまりに遠い?レストランに行くのが面倒になり、結局、ルームサービスになってしまうこともしばしばである。自転車で船内を走るわけにもいかないので、ユニバーサルスタジオで見たような電動スクーターのようなものが欲しくなってしまう。デッキでせっせとジョギングする人たちにとっては、大きい船のほうが、走りがい
船の前後を楽に移動できるシステム... の続きを読む
中学の卒業式を終えた春休み、私は初めて一人で泊まりがけの旅行に出かけた。目的地は青森県の五能線・風合瀬駅。近くに人家が数件見えるだけの海辺の無人駅だが、以前に買った五万分の一地形図「鯵ヶ沢」で初めてこの難読で味のある駅名を知り、また海岸線に沿ってどこまでも忠実に細かくカーブを切りながら進む五能線の「線形」にひかれた、というのが動機である。たまたまそこが目的地となったが、鉄道雑誌に載っていた「日本最
初めての単独泊りがけの旅... の続きを読む
家族旅行でスイスに行ったときに、ヨーロッパで一番高いところにある駅、ユングフラウヨッホ駅まで、登山列車に乗るツアーに参加していました。インターラーケンからグリンデルワルドで乗り換えて、それから登山列車、という内容でしたが、その前日に添乗員さんから「高山病予防として甘いものをなにか持ってきてください、頂上付近では、ゆっくり歩いてくださいね」と注意事項の説明がありました。それを聞いた母は、急に不安にな
家族旅行でスイスに行ったときに... の続きを読む
私も地名などの取材で全国各地に鉄道で赴き、バスに乗って観光地でもない集落をよく歩いたものだ。ひょっとしたら「不審者」と思われたかもしれないが、趣旨を説明して地名の由来を尋ねると、「あの人が物知りだ」と、わざわざその家へ案内してくれたことが何度もある。山形県庄内地方の小さな集落では、突然の訪問者にコタツをすすめ、まあお茶でもどうぞ、と歓待し、昔話を聞かせてくれた。帰りがけには、古くから伝承される地元
目で見て耳で聞くに勝るものはない... の続きを読む
敗戦間もない昭和二二年には近鉄で日本の特急復活第一号となる座席指定特急が走った。社の内外から「食うや食わずの時代に座席指定なんて」と反対があったというが、当時の社長は「そんな時代だからこそ快適な列車を走らせるのだ」と実現させ、沿線住民や社員に希望を与えたというエピソードもある。今回の震災に伴って多くのイベントが中止を余儀なくされた。不運にも大震災翌日に全線開業を遂げた九州新幹線の開通祝賀セレモニー
度を過ぎた自粛は日本経済の「意気消沈」を長引かせる... の続きを読む
ディナーがすめば、普通、シアターはレストランとは反対側にあるので、満腹のまま船の中を縦断して、シアターに向かうことになる。初めてクルーズ船に乗ると、食事はただ、エンターテイメントもただに感激してしまう。もちろんクルーズの料金に含まれているのだが、なんだか得したように思うから不思議だ。映画を観て、ダンスショーを観て、ピザを食べ、コーヒーを飲もうと、みなただなのだから、やっぱり船はいいと思ってしまう。
エンターテイメントについて... の続きを読む
大きな船になればなるほど、1回のディナーでは乗客全員にサーブできないので、普通はファーストシッティングがだいたい午後6時から、セカンドシッティングが午後8時30分くらいの、2回にわけてディナーを行う。重要なことは、席が初日に決まってしまうと、そのクルーズの間は席を変えることが難しいということだ。10万トンを超えるメガシップでは、大きなテーブルに10名近くが、一緒に食事をすることになる。外国船の場合
一緒に愉しく食事ということになる... の続きを読む
到着機が重なると長い列ができることはしかたないが、ひとりの入国審査にかかる時間は空港によってかなり違う。たびたび訪ねるバングラデシュはやたら遅い。飛行機1機分の乗客数なら、軽く2時間はかかる。そのスピードに匹敵するぐらい、シャルジャ空港のイミグレーションにできた列は遅々として進まなかった。コンピュータに名前やパスポート番号を打ち込むのだが、どうもアラビア語で人力するようだった。「名前はなんといいま
入国審査にかかる時間... の続きを読む
シンガポールの中級ホテルの1室にいるのはA氏とT君だけだった。3人で連携をとることにした。僕が検索サイトで都市名を調べる。A氏が地図帳を開く。そしてT君が電子辞書で調べる……。T君のパソコンをインターネットにつないでもよかったのだが、そうすると、さらに1700円の料金を払わなければいけなくなってしまう。電子辞書に甘んじるしかなかった。まずインドやネパール、バングラデシュ、パキスタンなどの都市をみつ
手間のかかる作業... の続きを読む
「若者たちはこれからどうなるのか」という外こもり批判に傾いていた。働かない若者へ戒め言葉が躍っていた。その背後には、「働きもせずにふらふらと生きる能天気な若者」という認識が潜んでいた。僕の言葉が足りなかったのかもしれない。いや文章力がないのか……。僕はバンコクで、多くの外こもり組と会ったが、その多くが、真面目で、働かないことに悩んでいた。周囲の人が抱く極楽とんぼのイメージとはだいぶ違った。日本にい
あたり前のように受け入れてくれる... の続きを読む
帰りは来た道を戻らず、大分、別府を通って博多へ戻る。反時計回りに北九州を一周するコースをとることになる。由布院から乗車した「ゆふいんの森三号」は、来るときに乗ったのとほぼ同じ風貌の車輛だが、内部はかなり違っている。この車輛こそが「ゆふいんの森」として最初にデビューしたもので、クラシックな内装に金ぴか趣味をとり入れて贅沢さを強調している。由布院駅を出ると、右に大きくカーブしながら町を抜けて盆地を走っ
故郷の味と車窓を楽しむ... の続きを読む
避難訓練でケガをするほどばかばかしいことはない。しかし、航空の現場では「機体が爆発する危険性がある」と緊急脱出をしたところ、大勢のケガ人が出る例が後を絶たない。飛行機での緊急避難は、機体のドアから滑り台式のゴム製シューターを使用して乗客を避難させるが、後続の人が追突したり、乗客が着地に失敗して地面にたたきつけられてケガをする危険性をはらんでいる。シューターは地面に固定できないため、風に巻き上げられ
シューターの危険性... の続きを読む
旅館の夕食、それは多くが、宿泊に付随したもの、と考えられる。何より、一泊二食付き、という言葉がそれを如実に表している。二食一泊付きではないのである。しかし旅館の中にはこの、二食一泊付き、と言いたいような宿もある。新潟県六日町に「欅苑」という料理屋がある。樹齢千五百年ともいわれる大樹を守るかのような茅葺きの民家で、素朴な山菜料理を出す店だが、ここには別棟に宿泊所がある。旅館というような大袈裟なもので
二食一泊付の宿... の続きを読む
誰怨むことも出来ず、己も似たような存在なのに、何故かお互いが疎ましい。果ては目的地まで、ずっとこの状態だったりすると、これから先の旅に暗雲が垂れ込める。特に車内がガラガラだったりすると、「不運」という言葉が重くのしかかる。と、これが自由席だと、席を移ろうと思えば移れるからだろう、みんなが適度に分散されて座っているので気分が落ち着く。混み具合にもよるが、新幹線だとA席、E席から埋まり、次にC席、D席
ひとり旅や閑散期は自由席がおすすめ... の続きを読む
ウォリック城と言う城郭がイングランドのウォリックシャーにあります。これは1068年に建設された城郭で17世紀まで軍事拠点として使われました。英国古来の伯爵の城郭としてよく知られていましたが、14世紀に国王に接収されると100年戦争の捕虜を閉じ込める牢獄として使用されました。またウォリック伯爵家の元に戻ると今度は国王を監禁するのに使われたりと、なかなか危険な場所でもあります。軍事拠点として何度も改築
海外旅行の行き先として有名な城... の続きを読む
列車がアパラチア山脈の最大の難関である、アルトーナのホースシュウ(馬蹄形)・カーブにさしかかる。列車の向きが180度も転換してしまう、壮大なカーブである。山間部でありながら、速度は少しも低下することなく快調に飛ばす。今でこそ輸送量の減少によって4本のレールは撤去されてしまったが、かつてこの区間は複々線で建設された。そのなごりである広い道床だけは残されている。山間の勾配区間をものともせず、複々線で突
列車がアパラチア山脈の最大の難関... の続きを読む
なにしろ3泊4日だ。「どうかよい人たちでありますように」、そんな気持ちでコンパートメントのドアを開けた。「ニイハオ」「こんにちは、よろしく」意外なことにそこからは明瞭な日本語が返ってきた。私の最大の関心事である下段の客は、ありがたいことに日本の明るい青年であったのだ。彼の名はN君、29歳。北海道岩見沢に住む食品製造会社に勤めるサラリーマン。学生時代から、中国それも西域の文化に強い関心があり、この休
同室は日本人... の続きを読む
二〇〇一年六月、二度にわたり北海道に行ってきた。私は高校生だった一九七八(昭和1十三)年の七月から八月にかけて、当時の北海道の国鉄全線に乗ったことがある。それから二十三年、ローカル線のほとんどは廃止されたが、「本線」と名の付く線は名寄本線を除いてまだ残っている。今回は、留萌本線、日高本線土函館本線の一部区間を除き、すべての「本線」に再度乗ってみた。青函トンネルで初めて北海道に渡り、特急と鈍行をうま
北海道の車窓十選... の続きを読む
今のバーデン・バーデンは、最新の医療施設が加わり、富豪の別荘、コンベンション施設(国際会議室)などで、ヨーロッパ随一の格式を誇る保養都市となっている。しかも外国人が五割以上占めるという国際保養都市でもある。浴場施設のフリードリッヒ浴場は、蒸気浴、微温浴、マッサージ、休息室で構成され、プログラムに従って約二時間。カラカラ浴場は最近作られた浴場で、日本の「クアハウス」的に作られている。中心は屋内・屋外
バーデン・バーデン(ドイツ)について... の続きを読む
日本人は「入浴好き」といわれる。それは高温多湿の日本の夏はひと風呂あびてサッパリしたい気持ちになるし、冬は湯で身体を温めたいという日本の生活の上で、入浴は欠かせないものとなっているからである。入浴の効果は、温熱、静水圧、浮力の物理作用と、心理的作用によって得られる。また入浴は皮膚を清潔にする。皮膚血管を拡張するので温まる。血液循環を促進する。新陳代謝を促進し、各臓器の機能が高進する。筋肉や関節など
風呂が好きな日本人の入浴の効果とは... の続きを読む
温泉の水は、循環水が大部分で岩漿水が僅かに混ざっているということはわかったが、ではその熱源は、はたして地球内部のマグマだけによるものなのだろうか。地上に降った雨は地下水となって地中深くにもぐり込む。地球の表面で水の存在するところを水圏という。平均海水深は三・八キロメートルであるから、水圏の平均もそれくらいであるといえよう。その内側約三〇キロメートル(大陸中心部)は岩石の層が続き、さらにその内側から
温泉の熱源はなにか?... の続きを読む
私の母は岡山出身です。ですから、厳密に言うと、人生で初めての国内旅行は母が私を出産後に帰った岡山だと思います。人生で初めての飛行機も、おそらく岡山便でしょう。当時の記憶はもちろんありませんが、写真を見ると祖父母や曾祖母、そして母の教え子(母は元小学校教師です)たちに囲まれている私がいます。その後、毎年のように訪れた岡山は、私の第二の故郷と言って良いくらい大切な存在となっています。行けばいつも温かく
人生で初めての国内旅行... の続きを読む
国内旅行の際に、観光地を回ると、移動の乗り換えに苦労したり、思ったように回れなかった、なんてことはありませんか?そんなときは、観光タクシーを利用してみませんか?観光タクシーって?と思う方もいるかもしれません。たとえば、京都などで、自分の行きたいお寺を回るプランを立てます。バスや電車での移動となりますが、行きたいところを観光タクシーに提示をして、見積もりをしてもらい、所要時間に合わせて、その時間分タ
国内旅行で観光タクシーを利用する... の続きを読む
大井川鐵道以外で旧型客車か走っている路線としては、青森県の津軽鉄道がある。冬季の一二月から三月まで毎日運転するストーブ列車で有名な路線だ。このストーブ列車は、旧式のディーゼル機関車が古びた客車を二両と新型のディーゼルカーを一両つなぐという面白い編成だが、古い二両の客車は、国鉄から譲り受けた旧型客車だ。外装がツートンカラーなので、それとは思っていない人もいるかもしれないが、車内は、まぎれもなく旧型客
国鉄から譲り受けた旧型客車が現役... の続きを読む
海を眺めていると不思議にも、時が止まる。のんびり、グータラ。あなたならどれくらいグータラ、できる?もう一度ベッドに戻る。このベッドからも海が見られたら最高だ。私たちの日常の疲れは、知らず知らずのうちにたまっている。「体は元気だ。何これくらい」と、思っても、実は社会生活を維持するための心のストレスはたまっている。だから、初めて南の島を訪れた人はきっと戸惑う。「何もしないで、2時間も海を眺めているなん
意外にもグータラするのが苦手... の続きを読む
河口湖発大宮行きの「ホリデー快速河口湖4号」は、旧国鉄色の183系六両編成だった。外見は国鉄色だが、車内はオリジナルの座席ではなく、グレードアップされたシートを使っている。しかも、座席の位置が中央の通路よりも一段高くなっていて、若干ではあるが、車窓を見る目線も高くなる。往時を知っていると、座り心地がよくなった分だけ得したような気がする。それでいて、特急料金不要の快速運転だから、まさにお得な列車だ。
左手に富士山を眺め、大月へ... の続きを読む
太陽きらめく宮崎へ。赤色や青色、黄色に緑色と、四色をキュービックパズルのように大胆に塗り分けた、いささか年増の厚化粧風の国鉄型特急電車三両編成による「きりしま6号」宮崎ゆきは、10時46分定刻に鹿児島中央駅を発ち、西郷隆盛白刃の地、城山の下をトンネルで抜けて、次の鹿児島駅で鹿児島本線から日豊本線へと踏み込んだ。ほどなくして、火山灰の堆積体であるシラス台地の末端が切り立った断崖を形作り錦江湾になだれ
特急「きりしま6号」〜特急「にちりん16号」... の続きを読む
フィリピン航空のほうが安ければ、当然、そちらを選ぶ。無料の機内食が出るし、機内では映画や音楽などのエンターテインメントも用意されている。客室乗務員に頼めば、毛布も貸してくれるだろう。欧米や東南アジアの空はいま、ここまできている。そのなかで、ようやく日本も格安エアラインの時代を迎えようとしている。日本の空をめぐる状況が、欧米や東南アジアよりかなり遅れていることは確実だ。欧米で格安エアラインが一気にそ
日本は格安エアライン乗り入れ期... の続きを読む